1972年ベルギーグランプリ (英: 1972 Belgian Grand Prix) は、1972年のF1世界選手権第5戦として、1972年6月4日にニヴェルで開催された。
レースは85周で行われ、ポールポジションからスタートしたロータスのエマーソン・フィッティパルディが優勝した。ティレルのフランソワ・セベールが2位、マクラーレンのデニス・ハルムが3位となった。
背景
1970年までベルギーGPが開催されていたスパ・フランコルシャンはF1マシンにはあまりにも危険すぎると考えられたため、ブリュッセル近郊のニヴェル・ボレールに舞台を移した。
レース前
本レースの前週5月29日にオウルトン・パークで開催された非選手権レースのインターナショナル・ゴールドカップは、マクラーレンのデニス・ハルムが優勝した。BRMのレイネ・ウィセルはこのレースで指を骨折した。
エントリー
ジャッキー・スチュワートはチャンピオンとしての多忙な日々や精神的重圧により胃潰瘍を患い、医師からドクターストップがかかったため本レースを欠場しなければならなかった。スチュワートの欠場によりティレルはフランソワ・セベールのみが参加した。BRMは負傷したレイネ・ウィセルに代わり、ヴァーン・シュパンを起用した。ブラバムはカルロス・ロイテマンが足首の負傷から復帰したが、まだ足を引きずっていたため、ロイテマンの代走を務めていたウィルソン・フィッティパルディはそのまま留まり3台体制とした。以降、グラハム・ヒルとロイテマンがBT37を、W.フィッティパルディはBT34を主に走らせることになる。
本レースからイタリアのテクノがF1への参戦を開始した。自製の水平対向12気筒エンジンが搭載され、タイトルスポンサーであるマルティーニのストライプが描かれたPA123をナンニ・ギャリが走らせる。
エントリーリスト
- 追記
- ^1 - スチュワートは胃潰瘍により欠場
- ^2 - ベルはマシンが準備できず欠場
- ^3 - ウィセルは負傷のため欠場
- ^4 - マルコは当初P160Bで参加したが、ゲシンが自身のP160Bを破損させたため、マルコのP160Bをゲシンに明け渡してシュパンのP153Bを使用した
- ^5 - アンドレッティはエントリーのみ
予選
エマーソン・フィッティパルディがクレイ・レガツォーニに0.15秒差で2戦連続のポールポジションを獲得した。この2人とデニス・ハルムがフロントローに並んだ。2列目にはジャッキー・イクスとフランソワ・セベール、3列目にはジャン=ピエール・ベルトワーズ、ピーター・レブソン、マイク・ヘイルウッドが並ぶ。ここまでの8台がE.フィッティパルディと1秒以内であった。4列目のカルロス・ロイテマンとアンドレア・デ・アダミッチまでがトップ10に入った。ウィリアムズで古いマーチ・711を走らせるカルロス・パーチェが11番手に入る素晴らしいパフォーマンスを見せた一方、ワークス・マーチ勢は悲惨な状況で、ロニー・ピーターソンは14番手、ニキ・ラウダは最後尾の25番手に終わった。
ピーター・ゲシンはコースアウトした際に自身のBRM・P160Bを壊してしまい、ヘルムート・マルコが使用していたP160Bをゲシンに与え、マルコにはヴァーン・シュパンが使用していたP153Bが与えられた。これにより、シュパンは以後のセッションに出走できなくなった。
予選結果
- 追記
- ^1 - シュパンはマシンをマルコに譲ったため決勝に出走せず
決勝
クレイ・レガツォーニが好スタートを切ってリードを奪った。エマーソン・フィッティパルディとジャッキー・イクスがレガツォーニを追い、デニス・ハルム、フランソワ・セベール、マイク・ヘイルウッド、ジャン=ピエール・ベルトワーズが続く。その後方でアンドレア・デ・アダミッチがピーター・レブソンと接触したことにより、大きな差が開いた。カルロス・ロイテマンもギアレバーにトラブルが発生していた。
序盤はレガツォーニが先行していたが、9周目にE.フィッティパルディがレガツォーニを抜いて引き離していく。12周目にはセベールがハルムの前に出て、26周目にイクスがスロットルのトラブルでストップするとセベールは3位となり、レガツォーニとの2位争いに加わることになった。セベールは31周目にレガツォーニを抜いて2位に浮上した。レガツォーニは58周目まで3位をキープしていたが、周回遅れのナンニ・ギャリを抜く際に接触して両者リタイアとなった。これでクリス・エイモンは3位に浮上したが、いつものように運に恵まれず、77周目には燃料ポンプの不調によりピットインを余儀なくされた。
E.フィッティパルディはレースを支配して今季2勝目を挙げた。セベールは2位に入賞し、ようやく今季初ポイントを獲得した。ハルムは3位表彰台を獲得し、4位のヘイルウッドも今季初ポイントを獲得した。ウィリアムズでマーチの旧型711を駆るカルロス・パーチェが5位と健闘し、またしても不運に見舞われたエイモンは6位でフィニッシュした。
優勝したE.フィッティパルディはポイントを28点とし、2位のハルムに9点差、イクスに12点差、胃潰瘍で欠場したジャッキー・スチュワートには16点の差を付け、ドライバーズチャンピオン争いでも一歩抜け出した。コンストラクターズチャンピオン争いも28点のロータスがマクラーレンに5点、フェラーリに9点、ティレルに10点の差を付けて頭一つリードした。
レース結果
- 優勝者エマーソン・フィッティパルディの平均速度
- 182.423 km/h (113.352 mph)
- ファステストラップ
- クリス・エイモン - 1:12.12 (66周目)
- ラップリーダー
- 太字は最多ラップリーダー
- クレイ・レガツォーニ - 8周 (1-8)
- エマーソン・フィッティパルディ - 77周 (9-85)
- 達成された主な記録
- ドライバー
- 初エントリー: ヴァーン・シュパン - 決勝に出走せず
- 最終完走: ヘルムート・マルコ
- コンストラクター
- 初出走: テクノ
- エンジン
- 初出走: テクノ
第5戦終了時点のランキング
- 注: トップ5のみ表示。前半6戦のうちベスト5戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。
脚注
注釈
出典
参照文献
- Wikipedia英語版 - en:1972 Belgian Grand Prix(2019年7月6日 3:37:20(UTC))
- 林信次『F1全史 1971-1975 [名手スチュワートの退場/若手精鋭たちの新時代]』ニューズ出版、1993年。ISBN 4-938495-05-8。
外部リンク
- Belgium 1972 - STATS F1
- Belgian GP, 1972 - grandprix.com
- 1972年第5戦ベルギーグランプリの結果 - F1 DataWeb




