ハプログループF (mtDNA)(ハプログループF (ミトコンドリアDNA)、英: Haplogroup F (mtDNA))とは、分子人類学で用いられる、人類のミトコンドリアDNAハプログループ(型集団)の分類のうち、ハプログループNの子系統「R9」を祖先に持ち「249d」、「6392」、「10310」などの特徴的変異をもつもので、サブクレードは、F1、F2、F3、F4などである。
概略
起源
この型の祖系の「R9」はNから分岐した系統にあたる。
分布
ハプログループFは、現在東南アジア最大規模の人口を持つグループである。 高頻度で見られる地域は、ニコバル諸島(50%)・インドのアルナーチャル・プラデーシュ州(31%)・ジャワ(28%)・小スンダ列島(23%)・中国大陸の長江以南(特に雲南省のラフ族77%・広州26%)・ベトナム(26%)・ラオス・フィリピン(29%)・台湾原住民(27%)・日本(5.4%)などである。全体としてオーストロアジア系民族やオーストロネシア系民族で高頻度である。中央アジアとメラネシアでは低頻度であり、アメリカ大陸では検出されていない。北アジアでもほとんど観察されないが、例外的にケット人においては23.7%の中頻度で観察される。
日本での分布
日本列島では、沖縄・宮崎をはじめ各府県にも分布し、北海道にも多少その痕跡が見られることから、縄文時代には既に南方諸島から北上したことがうかがえ、現在、日本人の約5.4%がこのハプログループFに属している。
日本人トップアスリートの身体能力との関連
近年、日本人のトップアスリートたちの身体能力とミトコンドリアDNAの研究が進むにつれ、瞬発系・パワー系の競技者群において、ハプログループFの頻度が高いことが指摘されている。これは、ハプログループFは、細胞内のCa2 濃度の調節や解糖系によるATP生成速度、筋収縮の速度に差があるのではないかと指摘されている。
系統樹
ハプログループFのサブクレードの系統樹は、マニス・バン・オーブンとマンフレッド・カイザーの論文に基づく。
- F
- F1 東南アジア・インドシナ半島など。(最も広範囲かつ高頻度で検出される型)
- F1a'c
- F1a
- F1a1
- F1a1a
- F1a1a1
- F1a1b
- F1a1c
- F1a1a
- F1a2
- F1a3
- F1a1
- F1c
- F1b
- F1b1
- F1b1a
- F1b1a1
- F1b1a1a
- F1b1a2
- F1b1a1
- F1b1a
- F1b1
- F1d
- F1a
- F1a'c
- F2 中国(長江以南)・タイなど。
- F2a
- F2a1
- F2a2
- F2a3
- F2b
- F2c
- F2d 日本(鹿児島・宮崎)など。
- F2a
- F3 (旧名 R9a) スマトラ・中国(主に長江以南)・ボルネオ・フィリピン・台湾など。
- F3a
- F3b
- F3b1
- F4 特に台湾原住民にみられる。(日本・中国(主に長江以南)・ラオス・タイ・フィリピン・マダガスカル等にも)
- F4a
- F4a1
- F4b
- F4a
- F1 東南アジア・インドシナ半島など。(最も広範囲かつ高頻度で検出される型)
脚注
関連項目




